マンガ 釣りキチ三平 平成版1 地底湖のキノシリマス

平成版釣りキチ三平の第1巻を飾った作品です。秋田県田沢湖にかつて生息していた魚である「キノシリマス」またの名を「クニマス」の存在を三平君が知るところから始まります。
クニマスは秋田県田沢湖にしか存在していなかった魚であり、当時は絶滅したとされていました。
いままでどんな魚も釣り上げてきた三平君ですが今回登場する魚は既に絶滅した魚。明らかに今までと違う展開に、平成版への期待が高まります。何より、旧作において三平君とともに釣りをしてきた一平爺さんはなくなっています。読んでいると何ともいえない寂寥感が三平君から伝わってきました。
クニマスは絶滅しているし、いったい今回はどんな魚を釣るのだろう。そう思っていると、三平君が一平爺さんの言葉を思い出します。かつて、クニマスがまだ田沢湖に生息していた頃、クニマスが人の手によって絶滅してしまうことを憂い、山深い池へクニマスを放流したと。
ここの一平爺さんの心の葛藤が心に響きました。人の手による環境改変で絶滅してしまう運命にあるクニマス。それを自らの手で別の池へ移した。自然に人の手を加えてはいけない。一平爺さんはそれを己の業として背負っていたのでしょう。そして亡くなる少し前に三平君にその話を伝えた。
ここからが感動です。三平君は山深い湖で、ひっそりとそしてたくましく生き延びていたクニマス達を発見します。
三平君が一平爺さんの霊前に報告する場面は必見です。三平君が発見して釣り上げたクニマスは、専門家が調べた結果、紛れもないクニマスでした。一平爺さんはクニマスの絶滅を防いだのです。周囲の人はこれを偉業だと言います。でもこれで一平爺さんが喜ぶかどうかはわかりません。自分が自然に手を加えたという複雑な気持ちをきっと持ち続けていたでしょうから。
そしてもう1つ感動すべき点があります。この本が発売された後、現実において本当にクニマスが発見されました。人の手で田沢湖では絶滅に追いやられたクニマスが、別の場所に放流され生き延びていた。
人間と自然の関係性について、非常に考えさせられる作品です。現実とのシンクロニシティがあったことは、歴史に記されるべきことです。

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